マンチェスター・バイ・ザ・シー
昨年のアカデミー賞で脚本賞と主演男優賞を受賞。
エンドロール、海辺の町の風景動画にクレジットが重なる。映画の題名といい、監督にとって思い入れのある町、風景なのだろう。作品の冒頭も海から始まる。その後繰り返し写し出されるマンチェスターバイザシーの海と空は、決して澄んだ青色でなく、澱の沈殿したような乳白色である。
タイトルバックのあと、場面はボストンの冬の景色に切り替わる。おりしもこの冬は、わが町でも、北部九州としてはかなりの降雪があり、寒く憂鬱だったを冬を思い出しつつ画面を眺めていた。その後も実際の移動、或いは本人の記憶が行きつ戻りつするなかで、二つの町の風景が丁寧に写し出されていく。ストーリーは重たく、ただし誰にでも起こり得るであろう出来事(実際近所で同じような事故が起こっていて身に積まされる。)が明らかになっていくのだが、挟み込まれる情景描写が余韻、カタルシス或いは癒しとなっている。
主人公の「乗り越えられない。つらすぎる。」という言葉が心に残る。乗り越えることのできない悲しみや辛さもある。そのことを誰かに伝える。口に出して言ってみる。それが一歩踏み出すきっかけになる。
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