イル・ポスティーノ
タイトル時に(THE POSTMAN)とある。′94年公開(伊)。日本公開は′96(平成8年)
イタリアの貧しい漁村が舞台で、フィリィップ・ノワレが亡命詩人役(実在した南米チリの詩人・パブロ・ネルーダ)て出ているということで、僕の好きなニュー・シネマ・パラダイスを連想し、きっといい映画なのだろうと、借りてきた。あの強い陽射しの下の、砂埃っぽい白い風景が僕は好きなんだなぁと我ながら思った。
この作品にも印象的な風景がある。郵便配達員(この亡命詩人のためだけの臨時雇用!)のマリオが詩人の家に郵便物を届け、そして戻る際、常緑樹の山を背景に赤白っぽい未舗装の道が、同じ角度から定点観測のように繰返し写し出される。そこを歩くマリオの足取りが彼の心情表している。只、この作品には埃っぽい風景は余りない。波打ち際が風景の主役だろう。詩人が母国に帰ったあと、マリオが、郵便局の上司と重い機械を抱えて音の風景を集めて回る様子が感動的。波の音も風の音も一篇の詩になり得る。ラストシーン、ひとり海岸に立ち目を閉じるネルーダ。彼には波の音が、マリオの残した一篇の詩に聞こえていたのかもしれない。借り物の言葉でも、まごころを込めればそれは自分の言葉となって相手の心に届く。
詩人をは言葉を紡ぐ。言葉を持たぬ者は詩人の言葉を借りる。その言葉はまごころを込められ、誰かの心に届く。風、波の音もまた一篇の詩となり、詩人の心を動かす。そんなことを考えている。
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2017.12.04 23:06