グラン・トリノ
2008年の作品。クリント・イーストウッドの作品を見るのは劇場でミリオンダラー・ベイビーを観て以来となる。いまから7年前の作品で、公開当時観に行きたいと思っていた。感想だが、彼が出ていれば私は満足で、格好いいと思う。今回は息子たちとコミュニケーションの取れない昔気質の偏屈男という設定だが、それも格好いいと思うのである。荒筋は、ベトナム戦争で米国側につき、戦後米国に移住したモン族の一家、特に孫にあたる姉弟(戦死したのか父親はいない)と、隣に住む男やもめとなったばかりのウォルト(イーストウッド)の交流を描いた物語。聡明でユーモアと勇気のある高校生の姉スーにウォルトが心を開いてゆき、彼女もまた信頼を寄せていく。そして、スーに促されるように弟タオとも言葉を交わしていくうちに、彼のなかの強さと勤勉さ(それはかつての米国人から失われたものかもしれない)に気づき、彼とのふれあいを重ねながらそれらを引き出し、一人前の男に育てていく。そして、病(末期の肺癌)による自らの死を悟ったとき、命をかけて二人のためにある行動に出る。その行動に共感できるかどうかが意見の分かれるところだろう。思うにミリオンダラー・ベイビーと共通するのかもしれないが、命は何より尊いという教科書のような言葉は、現実の人生のなかでは軽すぎて意味がないたきもあるということだろうか。ウォルトがタオに最後に伝えようとしたのは、復讐しても心が満たされることはなく、人をあやめることで一生自分が苦しむことになるということか。いや、そのように教条的な見方をしてしまうのが、きっと私の悪い癖なのだろう。グラン・トリノは1972年のフォード社製の車。車には詳しくないが、馬鹿でかいだけのアメ車のなかではシャープで格好いい。
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